構音障害・失語症

言語障害とは

言語障害の種類と特徴

言語障害には大きく分けて2種類あります。一つは、運動障害性「構音障害」です。言葉を発する脳や脳神経が障害され、発声・発語の器官(呼吸器・喉頭・軟口蓋・舌・顎・口唇)の筋肉や運動が障害されるために起こります。正しい発音( 構音)やはっきりとした発声が難しくなります。もう一つは、大脳の言語領域の障害により言葉の理解や表現ができなくなる「失語」です。どちらも言語障害ですが、原因が異なるため、特徴やリハビリ方法も異なります。

構音障害

発語筋や咽頭の運動障害によって、ろれつが回らなくなったり、話すスピードをコントロールできなくなったり、声の大きさを調整できなくなったりします。構音障害は大きく3つに分類することができます。

  • 弛緩性構音障害:球麻痺に伴う構音筋の麻痺と萎縮が原因。初期には唇音(パ行・バ行・マ行)次いで舌音(タ行・ラ行など)、歯音(サ行)喉頭音(カ行)などが障害される。軟口蓋が障害されると鼻声になる。
  • 痙性構音障害:偽性球麻痺によって生じる構音障害で、抑揚の乏しい単調で不明瞭な話し方が特徴。特に子音がはっきり発音できず(不明瞭発語)、声量が小さい。
  • 失調性構音障害:小脳疾患による構音筋群の共同運動障害。数語ずつとぎれとぎ入れで不明瞭。音節やリズムを無視した話し方でろれつが回らない(断綴性発語)や、ゆっくりと粘っこい調子で話す(緩徐発語)などの特徴がみられます。

失語症

失語症は脳に部分的な障害を受け、運動機能や感覚機能は正常で意識や知能にも障害はないが話す・聞く・読む・書くができない状態を指します。言語中枢の障害部位によって症状の現れ方が異なります。コミュニケーション能力の大幅な低下により社会復帰が非常に難しくなってしまいます。

  • ブローカー失語(運動性失語):相手の言葉や文字を理解していても自分が話したい言葉が出て来ず、否定や肯定の返答になることが多く、話し方に抑揚がなくたどたどしい感じになります。
  • ウェルニッケ失語(感覚性失語):言葉の理解が難しく、流暢に話しますが、意味不明な言葉や言い間違いが多く、認知症や精神障害と間違われやすい病態です。
  • 健忘失語:理解力は良好でも単語や物の名前が思い出せないのでまわりくどいいい方になってしまうのが特徴です。
  • 伝導失語:理解力があっても錯語が多く,復唱することが難しくなります。
  • 全失語:言葉を理解する・表現するどちらの能力も失われた状態です。

急性期・回復期・維持期に行われる言語障害のリハビリ

言語障害の急性期のリハビリ

意識状態が清明になり症状が安定したところで、標準失語症検査などを行い言語障害の程度を診断します。失語症の治療は発症後2週間がとくに改善がみられやすいとされており、言語聴覚士を中心に訓練を始めます。症状の程度の合わせてほぼ毎日訓練を行います。

言語障害の回復期のリハビリ

失語症のリハビリは話訓練、復唱訓練、音読訓練、聴覚的理解力訓練、呼称訓練、読解訓練、所持訓練など、訓練の内容は多岐にわたります。構音障害のリハビリは、おもに嚥下障害による合併症予防を行いながら、麻痺した筋肉の機能訓練を行っていきます。

言語障害の維持期のリハビリ

回復期に行ってきた訓練を自宅での療養生活に取り入れることや、通所や施設での訓練を継続することで機能を保ち、QOLの向上を図ることを目的としてリハビリの継続が行われる。

自分や家族でできる言語障害のリハビリ

家族の支えが重要

リハビリは生涯にわたって行っていく必要があるため、本人の「回復したい」という意思を支えていくことが重要です。話しかけ方や質問の仕方を工夫すること、待つ姿勢やサポートする姿勢を持つことで、コミュニケーションを円滑にする工夫が求められます。

構音障害・失語症・リハビリの事例紹介

最終的な目標は意思疎通を図ること

脳梗塞発症後に言語障害を生じてしまったら、コミュニケーションを取れない自分をもどかしく感じることでしょう。回復期や維持期のリハビリの段階になると、結果は緩徐になり、不安を抱くかもしれません。リハビリの目的はうまく言葉を使うことではなく周囲との意思疎通を図ることだと認識することで、趣味や好きなことを話題にするなどのコミュニケーションを楽しむ工夫を取り入れやすくなるでしょう。

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※このページの参考文献
・『全部見える 脳・神経疾患~スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! 』 服部 光男 監修(成美堂出版) 2014年5月出版
・『よくわかる最新医学 新版 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血』 高木誠著(株式会社主婦の友社)2018年5月出版
・『患者のための最新医学 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血』高木誠著(高橋書店) 2015年9月出版

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