嚥下障害

嚥下障害の症状

嚥下障害とは、食べ物や飲み物をうまく呑み込めなくなる障害で、急性期の患者さんの6~7割に起こり、再発の場合にはさらに頻度が高くなる後遺障害の一つです。嚥下障害があると栄養摂取が難しくなったり、「誤嚥性肺炎」を起こしやすくなったります。重度の嚥下障害がある場合、経口摂取が困難となるため、経管栄養が必要と診断された場合には、胃瘻造設などが行われ経管栄養へと移行します。

医療機関や施設で行われる嚥下障害のリハビリ方法

主な検査法

嚥下障害が疑われるときは、嚥下機能のスクリーニング検査や、ビデオ嚥下造影検査、嚥下内視鏡検査などが行われ、嚥下機能の評価をします。主なスクリーニング法には「反復唾液飲みテスト」「改訂水飲みテスト」などがあります。

嚥下訓練の方法

各種検査によって評価された嚥下障害の程度により、適切な摂取経路(経管か経口)・食形態・姿勢・代償的嚥下などの指導が、言語聴覚士や脳卒中リハビリテーション看護認定看護師によって行われていきます。急性期から始まり、回復期・維持期と継続して行われます。 嚥下訓練の流れは

  • 1.口腔ケア:口腔内の衛生状態の改善
  • 2.間接訓練:食物を用いず、口の開閉・舌の出し入れ・首の運動・言語練習によって嚥下に必要な動きを練習し、間接的嚥下反射を促す
  • 3.嚥下訓練の準備体操:頸部・肩や口腔器官の運動を行い、嚥下機関の筋肉をリラックスさせる。
  • 4.直接訓練:実際に食物を食べる摂食訓練で、十分にリスク管理を行い適切な食形態を用いて少量(一口量が2~3g)から始める。

嚥下訓練のリスク管理

誤嚥を防ぐために、重力を利用して食物が食道側を通るように体幹後傾位を取り、顔を麻痺側に向けます。また、代償的嚥下を行うことでも誤嚥を防ぎます。 主な代償的嚥下

  • 複数回嚥下:残留物があるとき、食物一口について複数回嚥下する。
  • 交互嚥下;水分やゼリーで残留物を食道へ送るようにする
  • 息ごらえ嚥下:息を止めてから嚥下し、嚥下後に咳をする
このように、誤嚥防止に努めながら、急性期・回復期・維持期とリハビリを進めていきます。

 

自分や家族でできる嚥下障害のリハビリ

誤嚥性肺炎を予防することが重要なので、本人も家族も指導を受けた方法をしっかり守ることが大切です。同時に、楽しく食事をする雰囲気も大切なので、環境整備にも気を配りましょう。

嚥下障害・リハビリの事例紹介

脳梗塞で生じた嚥下障害をもとの状態に戻すことは困難です。特に、脳梗塞で生じた嚥下障害は、喉頭や気管内の知覚が低下し、嚥下が起こるのが遅くなってしまう 「嚥下反射の遅れ」という現象が起こることで、ムセがなくても誤嚥していることがしばしばあります。最近では薬や手術で嚥下障害を改善する試みも始まっていますが、患者さんの症状に適した治療やリハビリを選択し地道に続けていくことが何より大切です。

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※このページの参考文献
・『全部見える 脳・神経疾患~スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! 』 服部 光男 監修(成美堂出版) 2014年5月出版
・『よくわかる最新医学 新版 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血』 高木誠著(株式会社主婦の友社)2018年5月出版
・『患者のための最新医学 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血』高木誠著(高橋書店) 2015年9月出版

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